会社設立Q&A
Q.商号を決めるときの注意点は?
A.以前に比べるとかなり自由に決められるようになりましたが、いくつか制限がありますので注意が必要です。
■会社の種類による制限
株式会社なら「株式会社」、合同会社なら「合同会社」の文字を必ず使わなければなりません。
■使用文字・記号の制限
使用できるものとしては、
・文字としては、漢字、ひらがな、かたかな、ローマ字(大文字・小文字)、アラビア数字(1・2・・・)
・記号としては、「&」(アンパサド)、「’」(アポストロフィ)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点)
の使用が可能です。
ただし、記号については商号の先頭や末尾に使用することはできません。(「.」(ピリオド)は末尾は使用可能)
また、上記以外のギリシャ文字(α・β)や「@」(アットマーク)、アラビア数字以外の数字(Ⅰ・Ⅱ)などは使用することはできません。
■会社の一部門を表すような文字の制限
商号中に、「支店」「支社」「支部」「事業部」など、会社の一部門を表すような文字を使うことはできません。
ただし、「代理店」「特約店」の文字は使用可能とされています。
■法律で使用禁止されている文字の制限
たとえば、銀行業を行わない事業者が「銀行」の文字、信託業を行わない事業者が「信託」の文字を使用することはできません。
また、公序良俗に反する文字・文言の使用も認められません。
なお、商号決定の際には上記の表現上の制限に加えて、類似商号調査も考慮する必要があります。
Q.類似商号調査は必要?
A.会社法施行前に存在した「類似商号規制」は今はありません。
使用禁止商号として「同一の所在場所における同一の商号」の登記が禁止されているだけです。
ただし、登記手続上は問題がなくても、不正な類似商号として後々商標権の問題が発生したり、不正競争防止法に基づく商号の差止や損害賠償の請求がなされる可能性がありますので、類似商号調査はしておくべきでしょう。
■類似商号調査の方法
1.管轄法務局での調査
本店所在地を管轄する法務局で「商号調査簿閲覧申請書」に必要事項を記入して申請します。(印鑑が必要です)
まず、「使用禁止商号」にあたるかどうかを確認しましょう。
そして、類似商号のチェックをします。ポイントは、
- 同じ市区町村内で
- 事業目的が似ていて
- 同じ商号または誤認のおそれのある商号はないか
をチェックすることです。
商号について、
- 予定商号の頭文字のファイル
- 商号中によく使われる名詞の頭文字のファイル
(「昭和」「新」「ジャパン」「総合」「大」「第一」「大和」「中央」「東京」「トータル」「日本」「ニュー」「平成」や設立する地区の地名関連(阪神地区なら「阪神」「大阪」「兵庫」「近畿」)など)
をチェックし、似た商号があれば、その事業目的を確認します。
誤認されるおそれのある商号があった場合は、予定商号の変更を検討しましょう。
2.特許電子図書館での調査
特許庁の「特許電子図書館」というホームページで、予定商号が商標登録されていないかをチェックします。
同様の事業内容で商標登録されていれば、その商号の使用は避けましょう。
3.インターネットの検索エンジンによる調査
予定商号をYahoo!やGoogle、msnで検索しましょう。
同じ商号やよく似た商号があれば、所在地や業種を確認します。
誤認されるおそれがあれば、予定商号の変更を検討します。
また、一般的によく知られている上場企業などの商号を、予定商号の一部分に使用することも避けましょう。
Q.本店所在地はどう書けばいい?
A.
- 定款には、本店が所在する最小行政区画(市町村区)までを記載
- 登記申請書には、番地まで確定した具体的な所在場所を記載
しましょう。
定款に番地まで記載することもできますが、本店移転の度に定款変更手続が必要になります。
最小行政区画までの記載なら、同一市町村区内の移転なら定款変更手続は不要です。
なお、登記申請の際には番地まで記載しなければなりません。(定款で番地まで定めてない場合には発起人の議決権過半数をもって本店所在場所を確定します)
また、許認可を要する事業を行う場合は本店の場所によっては許認可されないことがありますので、許認可の要件を確認しておく必要があります。
Q.公告をする方法はどう決めればいい?
A.株式会社には、決算等の内容を広く公開する義務があります。
これを公告といいます。
たとえ一人で運営されているような小規模な会社でも、公告義務は生じます。
公告をする場合としては、決算公告の他に、資本の減少・準備金の減少・合併・会社分割などがあります。
そして公告方法の種類としては、
- 官報に掲載する方法
- 日刊新聞に掲載する方法
- 電子公告の方法
の3つがあります。
このうち、日刊新聞については非常にコストがかかりますので、おすすめできません。
また電子公告についても、原則調査機関の調査を受ける必要があり、その都度費用がかかります。
官報に掲載する場合も費用はかかりますが、最も一般的な公告方法であり、特に希望がなければ官報に掲載する方法をおすすめします。
なお、定款に公告方法を記載しなかった場合は、公告方法は官報に決まります。
Q.資本金はいくらにすればいい?
A.資本金の額は自由です。
「資本金1円」でも設立することは可能です。
ただし、実際には信用面と制度面を考慮して決定することになります。
■信用面の考慮
資本金を1円にしても、明確なデメリットがあるわけではありません。
ただし、「資本金の額=信用力」と考える取引先もあるでしょうし、金融機関から融資を受ける際に不利になる場合がありますので、ある程度の額にはしたほうがよいでしょう。
なお、取引先に対する見栄えを考えると、会社法施行以前の有限会社の最低資本金だった300万円を一つのラインとしても良いかもしれません。
■制度面の考慮
資本金の額によって、制度による制限やメリットがあります。
- 資本金300万円未満→株主に対する配当ができません。(株式会社の場合)
- 資本金1000万円未満→2事業年度は原則消費税が免除されます。
- 資本金1000万円以下→法人住民税の均等割税金が減少します。
資本金1000万円以下の範囲では、以上3つのラインがあります。
また、許認可を要する業種では一定以上の資本金を要する場合があります。
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以上を考慮すると、特別な条件でない限り、
- 許認可を要する場合→必要な資本金額~1000万円未満
- 許認可が不要の場合→300万円以上~1000万円未満
が妥当だと考えられます。
Q.現物出資とは?
A.現物出資とは、金銭以外の「モノ」を出資して資本金として計上することです。
「モノ」としては、個人が所有するパソコン・自動車・不動産・有価証券などを出資することが可能です。
従来は、現物出資をするためには裁判所に専任された調査役による調査や弁護士・会計士による証明など煩雑な手続が必要でしたが、新会社法においては現物出資の金額が500万円以下の場合にはこれらの手続が不要になりました。
これによって、「500万円の現金を出資+500万円の「モノ」を出資」して資本金1,000万円の会社を設立することができます。
Q.事業年度はどう決めればいい?
A.事業年度は、1年以下の期間で定めることができます。
半年を1事業年度とすることもできますが、決算手続や申告などの面で煩雑になりますので、通常は1年を1事業年度とします。
ここで、決算日をいつにするかが問題になりますが、考え方としては以下の3点が挙げられます。
1.事業の繁忙期を避ける
- 事務負担の重複を避けたい場合
- 節税対策または赤字決算回避のための期間を確保したい場合
(「繁忙期=利益額の変動が大きい」といえますので、利益が予想を超えた場合は従来の節税対策では不足となる場合がありますし、予想より低い場合には思わぬ赤字決算となってしまう可能性があります)
2.設立日からできるだけ先の日にする
- スタート当初の事務負担を避けたい場合
- 消費税免除期間を長くしたい場合
(資本金を1000万円以下とした場合の消費税の免除期間は、原則設立後2事業年度です)
3.納税のための支出と資金繰りを考慮して決める
- 納税時期と大きな支出が発生する時期の重複を避けたい場合
(法人税などの納税は決算日から2ヶ月以内ですが、大きな資金支出が発生する時期(賞与支払月など)と重なると、資金繰りに影響が出る可能性があります。)
以上を考慮して決算日を決めましょう。
電子定款とは何ですか?
A.定款は、以前は紙で作成し、公証人役場で認証してもらうという方法しかありませんでした。
しかし、今では電子媒体での認証も受けられるようになりました。
これを電子定款といいます。
この電子定款を利用すると、定款認証時に必要な収入印紙代の4万円が不要となりますので、会社設立時にかかる費用を節約することができます。
ただし、電子定款といってもインターネット上で認証手続が完了するわけではなく、実際に認証を受けるには、従来どおり公証人役場への出頭が必要です。
なお、合同会社設立の場合は認証手続は不要です。
電子定款認証の手続は自分でもできますか?
A.電子定款認証手続をご自身でされることは可能です。
ただし、導入時に電子認証キットPRO、Adobe Acrobat Standardの各ソフト購入及び、日本認証サービスから電子証明書の発行を受ける必要があります。
これに約7万円の費用がかかります。
そして、これらのソフトを今後頻繁に使うことはあまりないと考えられます。
また、説明書を読んでソフトを使いこなしたり、定款作成や定款認証手続をご自身で勉強して手続をするにも、多大な時間がかかります。
初期費用の元がとれない可能性と、実際にかかる時間や手間を考えると、専門家に依頼することをおすすめします。
役員は誰でもなることができますか?
A.以下のような者は取締役になることができません。
- 法人
- 成年被後見人または被補佐人
- 会社関連法に違反して刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなってから2年以内の者(執行猶予期間中含む)
- 会社関連法以外の法に違反して禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
未成年者は法定代理人(親権者等)の同意を得て取締役になることができます。
破産は任期中の取締役の退任事由ですが、就任時の欠格事由ではありません。
なお、許認可を要する事業を行う場合は、許認可の要件を満たし、欠格要件に該当しない役員を選任する必要があります。(例えば、建設業許可を取得する場合には常勤の役員が経営業務管理責任者の要件を満たさなければなりません⇒経営業務管理責任者の要件はこちら)
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